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三栄書房

「他人と違う、面白いことをする」ためにインホイールモーターを選択!静岡大学EVチームの挑戦


★車両製作について…

Q 今回初めて製作されたEVフォーミュラについて教えてください。
A このEVフォーミュラは2009年度の車両をベースにパワートレーンをモーターとバッテリーに置き換えました。サイドに配置していたエンジンを外してできたスペースにバッテリーを置き、モーターはホイール内に配置しインホイールモーター構造としました。モーターをインホイール構造にするにあたり日本メーカーのものは適合するものがなかったため、海外製のものを使用しています。
Q またユニークなもの採用してきましたね、インホイールモーターって。
A 将来的には4輪全てにインホイールモーターを装着して、独立して制御できたら面白いな、と思ってインホイールモーターを採用することにしました。今年はひとまずリヤの2輪につけてみました。
Q 確かに4輪全てにインホイールモーターがついたら面白い車両になりそうですね。ところで、静岡大学がEVフォーミュラ製作に乗り出した理由って何なんですか?
A 2013年から開かれる予定のEVフォーミュラ大会に参加するためにEVチームを発足しました。今年のEV製作のための情報収集は昨年(2010年)の大会終了後くらいから始めていましたが、車両製作に本格的にかかり始めたのは夏休み前(7月)くらいからでした。
Q いくらベースの車両があるからとはいえ、結構タイトなスケジュールでしたね
A バッテリーが届いたのは大会の一週間前でした。
Q ぎりぎりですね(苦笑)バッテリーはどんなものを選んだんですか?
A 中国製のリチウムイオン電池です。1パック4セルのものを6パック、計24セルを使用して、重量は75kgでした。
Q 結構重い…日本製のバッテリーを使用しようとは思わなかったんですか?
A もちろん当初は日本のメーカーにバッテリーを協賛していただけるよう、あちこち回ってお願いをしたのですが、(秘匿事項が多いせいか)今回は協賛を得ることができませんでした。他の大学も多くは中国、韓国のバッテリーを使用していましたね。結局、静岡大学は今回、独学でEV製作に取り組みました。
Q すごいですね、独学でここまでやってしまうなんて…。それにしても日本のメーカーがこのような挑戦に協賛してくれないのは残念なことですね。
A このカテゴリー(EV)において、バッテリーやモーターに関しては日本のメーカーの協賛を得るのは難しいという現状があるようです。なので、結局その辺りは海外のメーカーに頼るしかないところがあります。ただ、製品を海外から購入すると予算を圧迫してしまうところもあり、EVフォーミュラの製作は非常に厳しいというのが現状です。
Q とても厳しい現状があるんですね。車両を製作していくうえで最も苦労したところはどんなところでしたか?
A 特に苦労したところはありませんでした(嘘)。モーター・コントローラ・バッテリーなどは海外製品なので、例えば分からないところがあればメーカーに質問したりするんですが、その際に英語で連絡を取り合うのに苦労しました。自分たちが伝えたいことを英語でうまく表現できず、意図を伝えることができないということが何度かありました。

★2011年の大会について…

Q EVフォーミュラは今年(2011年)の時点ではまだ正式な大会種目でありませんが、今回は正式に大会が始まるのを見越して模擬車検が行なわれ車検に通過した車両がエンデュランス走行(7周)を行ないました。参加した大学は6校。静岡大学のEVフォーミュラは初参加でしたが、EVフォーミュラ最古参の静岡理工科大学と並んで車検を通過しエンデュランスを走行しました。さて、ドライビングしてみた感想は?
A 重たい。車両自体が重たいのでなかなかクルマの向きが変わりにくい。大会の時は特に、左右同じ駆動力に設定して走ったので、コーナリング中にアクセルを踏むと“超”アンダーステア傾向になりました。
Q やっぱりモーターとバッテリーの重量増加は影響大ですね。でも加速力にかけてはやっぱりEVの方がエンジンよりも速いんじゃないですか?
A 加速は確かに滑らかです。でもエンジンには及ばない。もしかしたらバッテリーの性能があまり良くないのかもしれません。ですが、今後もこのバッテリーで最大のパフォーマンスを発揮できるようにしていきたいですね。
Q まだまだ開発の余地がありそうですね。
A ところで、EVフォーミュラも2011年はデザインの模擬審査がありました。その時に、審査員の方から我々のEVフォーミュラはレーシングカーに適していないのではないか、という指摘がありました。
Q 一体どんなところが?
A インホイールモーターを採用している点です。レーシングカーでは、ばね下重量が増加してしまうとマシンの挙動が悪くなってしまうからですね。
Q なるほど。私はブレーキダストや路面のほこりなどを巻き込んでしまうのではないかというのが心配じゃないかと思ってしまいましたが…。
A そこは割り切っていますね。エンデュランス走行の20km程度の距離であればそういった影響は少ないと考えています。静岡大学には「他人と違う、面白いことをする」という伝統があるので、そこで守りに入るのではなく他チームとは違うことをしながら良いマシンに仕上げていけたら、と思っています。

★EVフォーミュラ大会本格始動に向けて…

EVフォーミュラって海外では既に大会が開かれているところもあるんです。

Q たとえばどこの国で開催されているんですか?
A ドイツやイタリア、オーストラリア、イギリスなどです。海外の方が盛んで、特にドイツの大学はかなり積極的にEVフォーミュラに参加しているようですよ。ハイブリッド(HEV)フォーミュラもあって、国によってはエンジン、EV、HEVと別々の部門で開催されていたりもします。
Q そうなんですか。日本はやや出遅れている感がありますが、いつ頃正式な大会種目になるんでしょうか?
A まだはっきりとしたアナウンスがあったわけではありませんが、2013年ごろにはEVクラスが正式な大会種目として始まるようです。
Q 盛り上がるといいですね。2013年を前に、今回走行してみて見えてきた課題について聞かせてください。
A 一番の課題は冷却系対策です。今回は試験的に行なわれたエンデュランス走行だったから7周だったけど、実際に20周走るのは(現時点の車両では)きつい…。バッテリーの搭載位置や間隔などを検討して最適な冷却を考えないといけませんね。
Q 今のレイアウトだと走行風もあたりづらいですよね
A …というかあたらないんです(苦笑)。なので、2012年以降に向けてEV専用のシャシーをつくっていこうと思っています。ドライバーが真ん中にくるようなレイアウトは考えていますが、あまりスタンダードな形のものは考えていないですよ(笑)。
さすが、静岡大学魂。EVでもあえてスタンダードな形を放棄しつつも速さを求める姿勢は学生フォーミュラ大会初期の姿を彷彿とさせます。ちょっと穿った立場から頂点を目指す。このスタンスを崩さず頑張ってください。
ところで先日、東海大学のソーラーカーが世界最高峰のソーラーカーレースで優勝した際にチームを統括する木村教授はこう語りました。「日本の技術力の高さが本物だということを世界に示すことができた」と。
学生フォーミュラの日本大会もEV部門が正式種目となれば、その結果を受けて海外で挑戦するチームも出てくる可能性があります。海外では既にHEVフォーミュラやEVフォーミュラ大会が正式に開催されているのですから。その時に日本のチームが使用しているバッテリーが中国製や韓国製というのは、なんとも悲しいことではないでしょうか。日本の技術力の高さを世界に見せる機会を学生たちがつくり出そうとしている。技術の秘匿などいろいろあるとは思いますが、学生たちの真摯な姿勢に対して、もう少し寛大であってほしいと感じました。

はじめてのCFRP。CFRPモノコック製作奮闘記

Q カーボンモノコックをつくる工程はどれくらいあるのでしょうか?
A まず、NC加工機でウレタンブロックを削り、PC上で設計したモノコックフレームの形状にします。これがマスター型になります。次に、このマスター型にカーボンクロスを積層し、硬化、脱型することで転写型を製作します。最後に、この転写型に、プリプレグ、Alハニカム等を積層し、オートクレーブで成形することでモノコックフレームが出来上がります。
プリプレグは東邦テナックス様にいただきました。
Q 作業していく上で大変だったところはどんなところでしたか?
A もう全部です(苦笑)。
Q なかでも一番大変だったところって?
A カーボンとカーボンの間にアルミハニカムを挟み込んでいますが、ねじを締める箇所もハニカムだとつぶれてしまうのでインサート部にはアルミブロックを埋め込んでいます。ところが、成形後、ドリルで穴を開けたところそこにあるはずのアルミインサートが無かった…… 。精度が必要な箇所がこのようになっていた時は修正がとても大変でした。
Q どんな対策を取ったんですか?
A 穴を開ける位置で特に大事にしたいところを決めて、多少ずれてもいいようなところについて今回は目をつぶりました。全員の協力があったので無事乗り越えることができました。
Q 逆に、作業のなかで面白かったところは?
A Alハニカムのカットとインサートを埋め込む作業です(個人的に)。作業中、上達を実感でき、やみつきになりました。
Q 目に見えて上手になっていくとはまってしまいますよね(笑)
型にCFRPを貼ったのは学内だったそうですが、樹脂が硬化しないよう作業を進めるのは大変だったんじゃないですか?
A プリプレグは熱に弱く、特に夏場の作業では保管がとても大変でした。
Q 作業はいつごろ行なわれたんですか?
A 作業が一番盛り上がりを見せたのは、夏休み期間中(7~8月)でした。作業量が多く、大会の日も迫りつつあったので大変でした。
Q それは、プリプレグにとって一番過酷な季節でしたね。
A ですが、学内関係者の協力で冷房完備の部屋をお借りでき、なんとか樹脂が硬化しないよう作業することができました。
Q 最後は御殿場にあるムーンクラフトのオートクレーブで焼き上げたそうですが、出来上がった時の感想は?
A 感動しました。ここまでのモノコックフレーム製作工程1つ1つが、オートクレーブの蓋が開く間に思い起こされました。
Q 今大会で実際にCFRPモノコックで参加した感想を聞かせてください。
A 1つ1つの工程で、必ずと言っていい程問題が発生し、その都度フォローに追われる1年になってしまいましたが、その問題の数だけ考え、成長できたと思いました。結果こそ奮いはしませんでしたが、モノコックフレームで大会に参加でき、全ての動的競技で完走できたことはとても嬉しかったです。